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パソコンの中身を眺めていたらめちゃくちゃ懐かしい代物を発見したので
載せてみんとす。
ファイルのアクセス記録によると4年前の2004年に書かれたものです。


   『医者の話』

 世の中医者が余っているそうである。特に歯科業界は雨後の筍のごとくに歯科医院が乱立し、群雄割拠の戦国の世であるらしい。そういえば駅前など、ごく特定の地域では医院、診療所、病院などが軒を連ね、各医院は患者獲得にしのぎを削り従業員も削り、サービスの向上に努めるあまり患者を長時間待たせ、充実した治療のためにより多額の診療費を要求してくる。
 かかる昨今に医者になろうなどとはとても前途ある若者の選択とは思えない。医者になるくらいならば結婚詐欺師になったほうがよい。結婚詐欺師以外でなら、政治家、証券会社のトップディーラー、巨大コンピューターソフト会社の会長、ハリウッドの売れっ子俳優、ローマ法王などが、妥当な選択肢としてあげられる。特に私などはどの役柄についても申し分のない特質を備えていた。しかしながら私が医者になることを選択したため、そのほかの分野については多大な損失を与えてしまい、私がこれらを今から目指そうとしても断られるだろうと思う(少なくとも今は断られるに違いない)。このことに対しては私は非常に申し訳ないと考え、誰かれかまわず謝りたい気持ちでいっぱいだ(少なくとも私は常に誰かに謝っている)。
 しかし私があと4年間に及ぶ学生生活を選び、その艱難辛苦に耐え、親の厳しい視線に耐えながらそのスネを齧りとることにしたのには、それなりのメリットがあると考えたからである(錯誤かもしれない)。
 まず、人の病気を治して感謝される。これは至極当然である。人の病気を治したことで感謝される人間など、医者でなければ祈祷師、坊主、神主、神官、母親など数えるほどしかいない。このため医者となり患者を診察することは類まれな職務的満足を得ることによって、かけがえのない満足感につながるのである。もしくは、病気を治さなくても感謝される場合がある。主に痴呆、寝たきりなど手のかかる老人、莫大な生命保険に入っている一家の主人などの場合かえって治癒しないほうが感謝される場合もある。その場合でも感謝されることにより満足できる。しかし一方で誤診や、誤診によらずとも病気を治癒できないことによって、医者は責任を問われることがある。それがたとえ看護婦が患者を間違えた、メスと鋏を間違えた、点滴と牛乳を間違えた、などの人為的あるいは根本的過失によるものであっても、医者はその責任を問われる。人間とはミスを犯すものであると言う明白な事実が示されているにも関わらずである。このことからつまり医者とは人間ではないものとして崇められていることがわかる。また、些細なミス、たとえばトイレから出てきたときチャックが開いていた、鼻毛が伸びていた、実はかつらだった、などの理由によって叱責され糾弾され、社会的に抹殺される可能性がある。このような特別待遇を受けられることによる満足感はいいあらわすことのできないものである(私には表現ばかりか理解もできない)。
 このようにほかの職業には見られない特徴に恵まれた医者稼業だが、それに伴う苦労もまた度外視できないものがある。にもかかわらず、医者人気は高い。群馬大だけでも100人もの新入生がいて、それらのうちほとんどが目出度く医師免許を獲得する。医者になるべき理由や目的は人それぞれだろうが、それらのすべてが正しいとしたら何も問題はこの世の中にありはしないだろう。個人の持つ夢や願望はときとして本人だけに正しいものであり、万民にそうとは限らない。だからこの世にはかくもややこしい問題が跋扈する。
 一人ひとりの患者と向き合い、それを治療する手助けがしたいという私の思いは、必ずしもすべてにおいて正しいとは限るまい。しかし、誰もが、個人の抱くそうした考えや思いに対して否定を唱えることはできない。仮に唱えることができたとしても、否定を主張し、押し付け、弾圧し抑圧するようなことは到底できない。万民すべてに正しいと思える行為が存在しない以上多数に従うのが民主主義ではあるが、少数である意見もまた、数限りなく混ざり続ける。
 100人の医者がいれば100人の治療がある。その一つ一つが正しく、間違っている。自分が間違っていることを知っている人間は優しい。間違っていながらそれを正しいとして進めむことのできる人間は強い。
 私は、強くやさしく生きていける、そんな医者になりたいと思う。

3月20日 桜の咲いた朝っぱら




もしかしたら以前にもアップしてたのかもなあ。
激しく懐かしいです(笑)
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